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大阪地方裁判所 昭和30年(行)48号 判決

大阪市南区北桃谷町六十三番地

原告

森敬

大阪市南区高津町七番町二十五番地

被告

南税務署長

白神素臣

右指定代理人

児玉孝三

同右

山本楢治

右当事者間の昭和三十年(行)第四八号課税処分取消請求事件につき当裁判所は昭和三十一年五月十九日終結した口頭弁論に基き次のとおり判決する。

主文

原告の訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告は被告が昭和二十九年六月三十日原告に対して為した昭和二十八年度分の課税総所得金額を金二十四万一千円(所得税額金一万二千七百五十円)とする更正処分のうち金五万円を超過する部分はこれを取消す訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求めその請求原因として、原告は昭和二十九年三月五日被告に対し昭和二十八年度分の総所得金額を金五万円として確定申告したところ被告はこれに対し右総所得金額を金二十四万一千円(所得税額金一万二千七百五十円)と更正し同年四月二十七日原告に通知して来た。原告はこれに対し異議があるので同年五日二十四日被告に再調査請求を為したが同年六月二十八日附右請求を棄却する決定が為され該決定通知書は数日後原告の許に到達した。

原告は更に同年九月六日大阪国税局に対し審査請求を為したが同三十年三月十九日右請求を却下する決定が為された。被告の為した前記更正処分は被告に於て何等具体的な調査を行はずに為されたもので所得税法第四十四条に反する違法な処分である。

よつて被告の前記更正処分のうち金五万円を超過する部分の取消を求めると陳述し、被告の主張に対し、原告主張の審査請求が再調査決定通知書を受領してより一ケ月経過後に為したものであることは争はないと陳述した。被告指定代理人等は本案前の答弁として主文同旨の判決を求め、その答弁として、原告主張事実中原告が被告に対し昭和二十九年三月五日その主張のように確定申告をなし、被告がこれに対しその主張のように更正決定をなし、同年四月二十七日右決定を原告に告知したこと、これに対し原告が同年五月二十四日再調査請求し被告に於て同年六月二十八日右請求を棄却しその数日後、該決定を原告に告知したこと、原告は更に同年九月六日大阪国税局に審査請求をなしたことはこれを認めるが本訴は審査請求の目的となる処分の取消を求める訴であるところ、原告は再調査決定通知書受領後一ケ月の法定期間を徒過した昭和二十九年九月六日に審査請求を為し、このため請求却下の決定を受けているから結局訴願前置の要件である適法な審査の決定を経ていない不適法な訴として却下されなければならない、と陳述した。

理由

原告主張の事実中、原告が被告に対し昭和二十九年三月五日その主張のように確定申告をなし被告がこれに対しその主張のように更正決定をなし同年四月二十七日右決定を原告に告知したところ、原告は同年五月二十四日再調査請求し被告に於て同年六月二十八日右請求を棄却しその数日後該決定を原告に告知したところ、原告は更に同年九月六日大阪国税局に審査請求をなしたことは被告において認めるところである。そこで先づ本訴請求が適法になされたものであるか否かについて按ずるに、いつたい課税処分に対し異議ある者は当該処分を為した税務署長若しくは国税局長に対し、所得税法第四十八条、第四十九条により夫々定められた期間内に再調査請求若しくは審査請求を為すことが出来、且かかる処分の取消を求める訴は同法第五十一条により審査の決定を経た後でなければ之を提起することは出来ないところ、本件に於て原告の審査請求は、再調査決定通知書受領後一ケ月の法定期間を経過した後に為されたものであることは前叙のごとく当事者に争ないのであるから結局原告の本訴提起は前記法条の規定する訴提起の要件を欠く不適法のものと云はなければならない。

よつて本案に入つて審理する迄もなく原告の訴は不適法としてこれを却下し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 乾久治 裁判官 松本保三 裁判官 井上孝一)

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